三陸鉄道 織笠駅
旅行記です。
東北旅行中の1日を使って、『すずめの戸締まり』の聖地巡礼へ行ってきました。
現時点では公開して間もない作品ということで、ネタバレになるので、観てない人はここでやめてとりあえず映画館の座席予約しちゃってください。(なるべく早く観ることが最良のネタバレ対策という格言がある)
考察ガチ勢のような深い内容を書くつもりはないですが、話の根幹部分には触れてしまうというか触れざるを得ない場所なので。
織笠駅は三陸鉄道の駅です。
岩手県の山田町にある駅で、なかなかアクセスしづらい場所にあるのですが、映画鑑賞後の感情が高ぶってる状態のうちにノリで行ってしまった方がいいと思い、東北旅行中にプランニングしてみました。
盛岡駅から出発です。
全国旅行支援を利用して、盛岡駅前のリッチモンドホテル盛岡駅前に宿泊してました。
盛岡から宮古まではバス移動。
往復3,900円です。(片道ずつ買うと片道2,100円)
当日購入しました。
内陸の盛岡から沿岸部はかなり離れていて、距離感的には、関東だと東京都心から成田へ行くぐらいの感覚でいればいいかなと思います。
県北バスは全国旅行支援の地域クーポンの対象になっていたので、盛岡‐宮古間のバスの乗車券の支払いにも利用可能でした。
地域クーポン3,000円分と現金900円で支払い完了。
盛岡駅前から出発。
宮古まで、特急1時間40分、急行2時間5分です。
乗りたい時間が合えば特急がいいと思います。
座席の間にはパーティションが設置してあったので、少し窮屈な感じはありましたが、外の景色を眺めながらのんびり宮古へ向かいました。
車内ではWiFiも使えたので、窮屈ながらPCでの作業もできました。
道の駅でのトイレ休憩もあります。
売店で飲み物買いました。
普通に生活していたら一生関わることのない場所や人との小さな関わりを持てるのが、今まで知らなかった場所への旅の楽しい部分の一つだと思います。
あのコンビニに入ることも、あのファミレスで注文することも、あの窓からこちらを眺めることも、私の人生ではほぼ確実にないのだ。私の体はあまりにもちっぽけで、人生の時間は限られていて、一瞬で通り過ぎていく風景のほとんど全ての場所に、実際に立つことは出来ないのだ。そしてほぼすべての人間が、私には関わることの出来ないそういう風景の中で毎日を送っているのだ。それは私にとって驚きと寂しさの入り混じった、どこか胸を打つ発見だった。
これは映像作品のほうにはありませんでしたが、すずめの戸締まりの小説版に登場した鈴芽の移動中の心理描写で、自分が共感した部分です。
自分の日常とは遠く離れた、自分にとっては非日常の場所で、他人がその人にとっての日常を同じように過ごしているというのは、どれだけ旅の回数を重ねても飽きないというか、面白いと感じられる部分です。(むしろ回数を重ねてその土地への理解が深まるとより面白くなるのかもしれない)
映像作品でモノローグを多用するとそれに対する拒否反応も多い(ポエム的な語りを受け付けない人がかなりいるっぽい)ので、最近の映像作品では直接的な心理描写は減少傾向にあるような印象も持ってますが、テキストなら自然に表現できる部分もあるので、小説版は小説版で映像作品にはない楽しみ方もできると思います。
映像作品のほうでは単に外の景色を眺めてるだけでも、こういう感情で眺めていたんだなと、小説版読了勢は脳内モノローグ自動再生されてました。
時間通り、特急は100分で宮古到着です。
駅前には鳥と戯れる像。
大井町駅の子供からTwitterを取り上げる母親の像を見てから、鳥と人が戯れてる像すべてがツイッタラーに見えるようになりました。
世間を賑わせるイーロンマスクさんがTwitterをこれからどう導くのか楽しみです。
何もしなかったら普通にそのまま衰退していくと思ってたので、攻めの姿勢で稼げるようにガンガンやって希望を持たせてほしい感じもあります。(広告モデルはオワコン化してると言われてるので決済システム導入が個人的には一番楽しみ)
宮古駅。
三陸鉄道だけでなく、JR(山田線)の駅でもあります。
三陸鉄道は紙のきっぷです。
列車の間隔は1時間以上空くので、計画的に動かないと、時間を持て余すことになります。
次の釜石行きまで1時間以上あったので周辺散策しました。
沿岸地域なので東日本大震災での津波被害も。
言ってしまうと、すずめの戸締まりは東日本大震災を扱った作品なので、震災がトラウマになってる人は苦しい部分もあるかと思います。
これまでの作品でも、隕石だとか豪雨だとかで直接それを描くことはしてなかったですが、震災を想起させる事柄がテーマになってました。
たしかに『君の名は。』の段階で直接的に震災を扱うのはまだ時間の経過が足りなすぎたと思いますし、これぐらい(10年以上)経った今がそのタイミングという判断だったのかなと。
「風化させない」「語り継ぐ」と言っても、なかなか大勢の人に訴えかけるのは難しいですし、エンタメ作品を通じて、多くの人(特に当時まだ幼くて自分の記憶としては曖昧な若い世代)に過去に起こった大きな出来事に触れる機会を作るというのも大事なことなのかなと思います。
震災がテーマのひとつではありますが、重苦しい作品ではなく、ヒロインが日本全国に行って帰って来るロードムービーなので、鑑賞後の余韻は決して悪いものではないです。(行ってきますで終わらずに帰ってくるところまで描いてるのが重要)
海の近く、宮古駅から10分強のところにうみどり公園という公園がありました。
震災関連のモニュメントも。
整備された過ごしやすそうな公園という、芹澤のような感想を持ちましたが、それはその土地の元の姿を知らないからだと思います。
その場所の元の姿を知ってる人とそうでない人とでは、齟齬が生じるのは避けられないと思いますが、その場所の日常がある日を境に突然失われて、その瓦礫を取り除いた後に整備されたきれいな場所があるということは理解していた方がいいかなと。
このうみどり公園も、震災被害のあった旧市役所跡地にできた公園だそうです。
その場所の元の姿を知ってる人からすれば、真新しい人工建造物を見ると「こんなのは復興じゃない」という意見もありそうですが、似たものを復元しただけで元の生活が戻るわけでもない(何より10年以上の時間の経過もある)ですし、難しい問題だなとも思います。
すずめの戸締まりのテーマにある、場所を悼む行為(扉を閉じることで表現)が人々に響くのは、日常の場所が失われた(あるいは失われつつある)人の気持ちがあるからこそなのかなとも感じます。(震災に限らず過疎化等で失われつつある景色は全国各地にある)
うみどり公園は遊具も豊富で、小さい子供連れの親子が遊んでました。
彼らにとってはこの公園が日常の場所になるんだと思いますし、ただ楽しそうに遊んでる姿を見られたのはよかったです。
宮古市では遊覧船の運行も開始されたようでした。
浄土ヶ浜のほうも時間があれば行きたかったですが、今回は三陸鉄道メインなのでなし。
宮古駅へ戻って、釜石行きに。
三陸鉄道。
NHKの『あまちゃん』で一時期注目されてた記憶があります。(そう考えると2013年という早いタイミングで震災テーマに扱ったのはすごいなとも思う)
あまちゃんのロケ地は北三陸がメインなので、宮古からだと今回は反対方面。
宮古‐織笠は片道850円。
券売機ある駅の場合は現金で購入して降車時に渡せばOKです。
無人駅の場合は、とりあえず列車に乗り込んでから整理券をもらって、降車時に支払いとなります。
前乗り前降りのバスのようなイメージです。
乗る前は『この距離で850円か、ちょっと高めかな』と思ってましたが、乗ってみるとテーブル付のボックスシートがかなり快適で、『最高じゃあないっすか』という感想に手のひら返ししました。
40分程で織笠駅到着。
僕には草太さんと鈴芽さんが見えました。(完全にキマっちゃってる人)
駅の待合室には早速ポスターの掲示も。
平日昼間だったので他には聖地巡礼してる人は見かけませんでした。
というか織笠駅で降りたのが自分だけでした。(写真見たら地元民っぽいおじいさんも一人写ってたので撮影に夢中になってるうちに一緒に降りてたかも)
特徴的な外観デザインの待合室が目立ちます。
待合室とプラットフォームがあるだけの無人駅です。
交流ノート。
聖地巡礼してる人も既に20人以上いました。
自分も何か書こうかなと思いましたが、寒い時に字書くとダイイングメッセージみたいな筆跡になるので、自重しておきました。(元々字きれいに書けないけどほんとに小学校低学年みたいな字になる)
宮古に戻る次の列車まで1時間以上待つ必要があったので、周辺散策へ出かけてみました。
海に近い自然豊かな穏やかな場所という印象です。
織笠駅から徒歩数分のところにローソンがあるので、買い物とかあれば、そこ使えば特に困ることもなさそうです。
海沿いには大きな堤防。
元の姿を知ってる沿岸地域に住む人からは不気味だという感想もあるようです。
必要なものでも震災を想起させるものには嫌悪感を抱いてしまうという感情は仕方ないかなとも思いますが。
ところどころにポップな絵が描いてあったり和みポイントも入ってました。
観光スポットとしては山田湾展望広場も駅から徒歩で行けます。(10分程)
山田湾を一望できます。
山田湾には、オランダ島という東北唯一の無人島の海水浴場もあるそうです。
水門工事。
元の織笠駅があったとされる場所。
津波被害で流されたので、新しい駅は1キロ程移動したところに作られました。
部分的にコンクリートは見えましたが、跡形もないという感じで、元の場所を調べてないとこの場所に駅があったということはわからなかったと思います。
時間あれば、隣駅の陸中山田も歩ける距離なので行ってみようと考えてましたが、織笠駅周辺だけでも普通に1時間ぐらい散策できてしまったので、そのままコンビニで買い物して駅に戻ることに。
時間余ったらすずめの戸締まりのプレイリストでも流して散歩してればいいと思います。
『カナタハルカ』もいいけど、個人的には『Tamaki』も胸が締め付けられる感情になりました。(アラサーは環さん、鈴芽さんのどちらの気持ちもわかる部分があって揺さぶられると思う)
「胸の中で思っちょったことはあるよ……。――でも、それだけでもないとよ」「ぜんぜん、それだけじゃないとよ」
「……私も。ごめんね、環さん」
↑全人類号泣ポイント
駅前。
これから映画観る人も多いでしょうし、聖地巡礼の旅行者で賑わうといいなと思います。
織笠駅ありがとうございました。
ローソンで買ったコラボ商品のミルクティーを飲みながら同じルートで帰路。
なかなかアクセスしづらいところなので、すずめの戸締まり観なかったら訪れることもなかったと思います。
そんな場所に行くモチベーションを与えてくれた作品にも感謝です。
帰ったら映画館に2回目でも観に行こうと思います。(実際に行ったあの場所だという視点も加わるので内容自体は同じでも自分自身の経験が重なることでより楽しめる部分が増えると思う)
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